シズルが変わる日

立体駐車場で車を待っていた時にプリウスが出てきたんです。
例によって、スーっと無音で。
それで私の前で待っていたオジサンがこちらを見て
プリウスって怖ぇなぁ」と伝法な口調でおっしゃってました。
「そうですね、交差点で出てくる時に気がつかないですね」
「だなぁ、でもラジコンみたいで間抜けだなぁ」

確かにガソリンエンジン時代に育った私たちは
「ブォンブォン」という音色でどんな車なのかを感じ取ってきました。
F1でホンダの高回転エンジンの高音に興奮し、
ディーゼルのギュオーンという音に力強さを感じ、
ビーンという原付の2ストエンジン音に軽快さを感じてきました。
プリウスは無音で動き始めて、
しばらくして「フィーン、ブロロロ」とエンジンが動き始めます。
これが電気自動車なら無音なんですね、きっと。

音なく動く車を見て「エコだ」「未来っぽい」とは思います。
では、車としてはどうなのか、カッコイイのか。
ドラえもんやアトムに出て来た未来の◯◯は
「未来のシズル」にあふれていたけど、
◯◯のシズルがあったとは思えない。
未来の車は未来っぽいけど車っぽくないんですよね。
冷静に考えれば規格の異なるモノが出てくるから当たり前なのですが。

ズングリムックリと静かに動くプリウスを見て
このような車ばかりになった時、
車はどういう基準で車のカッコ良さが決まるのか、
そしてその新しいカッコ良さが自分の腑に落ちない時、
私は引退しないといけないのだろうと、ふと思いました。